#22 PT

探索

歩いていると、向こうの木の陰から誰かが出てきた。
その緑のローブと紋章の入った杖は、キシェタトル兵のものだ。
兵士は行路に出て辺りを見回すと、こちらに向かってきた。

「ふえぇ、助けてくださぁい…」

話によると、この兵士は魔族討伐を命じられたものの、自信がなく隠れていたらしい。
だが、何もせず帰ったとあれば、どんな処分を受けるか分からない。
だからせめて、旅人を守って帰ったという名目がほしいのだと言う。
兵士と共に行路を歩いていると、不意に目の前に魔族が現れた。
魔界の物と思われる赤黒いローブを身にまとっている。
一見すると端正な顔立ちで、程々に高い背丈とあいまって格好よく見える。

「フフフ、ここで会ったが運の尽き。
　魔王様に仇なす者は生きては返さないと思え。」

「で、で出たぁー！
　ど、どうしたらいいんですかぁ！」

兵士は泣き叫んでいる。
戦おうという意思は全く感じられない。

「よーし、まずはそのうるさい奴！
　…ん？
　そのローブはまさか兵士！？
　バ、バカな、そんな情報は聞いてない！」

敵も急にうろたえ始めた。
ここに兵士がいることがよほど想定外だったらしい。
すぐにきびすを返し、行路の向こうへと逃げ始めた。

「く、クソッ！
　仕方ない、ここは退却だ！
　お前ら、時間稼ぎでもしてろ！」