世界のどこかで魔王が倒されちゃったみたいで、どうやら私達の役目も終わるみたいです。
　…たぶん、私の任務もこれでおしまい、だと思います。この世界について書き溜めたメモも、いっぱいいっぱいになりました。きっと読む方も大変だと思います、この量。カバンのなかがいっぱいいっぱいです。
　アルノーさんやジニーさん、ポストさんともこれでお別れかと思うと少し悲しくなってしまいます。こうやって長い時間一緒に旅をしていると、やっぱり色んな事を思うんですね。
　この世界で、まだみんなと旅をしていたい。そんな気持ちも、あるんですが……私には、やらなきゃいけないことがある。帰らなきゃいけない世界があるから、私は涙を飲んで帰ることにします。
　ありがとう。そして、さようなら―――










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　　（もう一つめくると、メモ帳の中に破られたページがある。）

　

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　　（宿のゴミ箱の中に、破り取られたページが捨ててあった。）



本当にこの世界は「幻想」なんでしょうか？私は、アルノーさんやジニーさん…それから、途中ではぐれちゃったちっちゃい子を見てどうもそうは思えなくなってきました。ポストさんは……ちょっと、なんとも言えないけれど…それでも、それを「幻想」として切り捨てるのはなんだか間違っている気がします。彼らは、作り物なんかじゃない、想像上のものなんかじゃないちゃんと意志を持った人間（人間？）でした。
D級ダイバーの私はデバイスを持ちません。仮にこの世界が幻想だったとして、私は元いた世界である「現実」を感触として思い出すことが、「帰還すること」以外にありません。
私は…私が生きた世界は、本当に帰るべきそこなんでしょうか？　ずっと夢を見ていて、この世界こそが本当に生きていた世界で、私は――何処へ、帰ろうとしているんでしょうか？書けば書く程、元の世界の事をボロボロと忘れていきます。まるで、眠りから覚めて、頑張って思い出して、夢日記を書いているような―――そんな心地です。記憶の中に開いてしまった穴を、想像と捏造で埋めているような感覚。私は、本当はどこに生きているんでしょう。
気を抜くと浮いてしまう身体だけが、この世界が現実ではないことを教えてくれます。私の空想固着力が低かったのは、幸いだったのかもしれません。……もうすぐ私の送った通信が届いて、私は"強制送還"のような形で元の世界へ連.